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『秒速5センチメートル』札幌シアターキノ初日・非公式レポ
  極力ネタバレなしの方針で綴っていますが、鑑賞後の雑感や舞台挨拶の内容を含みますので、
  未見の方はご注意ください。半分近くは筆者の無駄話ですが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

xx:xx
─ at first ─
 
2007年4月21日、札幌・シアターキノにて、新海 誠の最新作
連作短編アニメーション『秒速5センチメートル』が封切られました。

初日には新海監督の舞台挨拶があり、短時間ながら良い話が聞けたので、
自分なりに当日の模様を綴っておきたいと思います。

  © Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


xx:xx
─ introduction ─
 
小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹(タカキ)と篠原明里(アカリ)。
二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。
そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。

■ 貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」(おうかしょう)

■ その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」

■ そして彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った表題作「秒速5センチメートル」

3本の連作アニメーション作品

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


xx:xx
◇◆ 2ヶ月前 ◆◇
 
Yahoo!の『秒速5センチメートル』公式サイトで、
第一話「桜花抄」の無料配信を知ったのは、配信終了の直前でした。
(2/16〜2/19、72時間の限定配信だった為、見逃した人も多いのではないでしょうか)

1話のみの配信を見ようか見まいか、筆者は少し悩みました。
ここで中途半端に見てしまうより、スクリーンで全編一気に見た方が良いのでは…とも
思いましたが、せっかくの機会を逃す手はないだろうと考え直し、再生を開始。

第一話「桜花抄」は、時間にして26〜27分。
作品全体の尺が約1時間なので、比重としては結構あります。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

詳しい感想は控えますが、美しく繊細に描かれた映像、脚本、そして音楽が
とても好印象で、「これならぜひスクリーンでも観賞したい」と素直に思える一編でした。

また、昨年7月から公開されていた予告編(特に第1弾)が非常に気に入っていて、
このことも、映画館へ足を運ぶ大きなポイントになっています。

(予告編は、公式サイトの運営期限である2007年6月30日まで再生可能です)


19:30
◇◆ 公開前夜 ◆◇
 
仕事帰り、狸小路商店街のシアターキノに寄って前売チケットを購入。
一般の映画館のサービスデーと同じ1,000円という料金はありがたいです。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

前作『雲のむこう、約束の場所』では、あらかじめ前売券に整理番号が振ってあり、
その番号順に入場するという流れでしたが、今回は舞台挨拶のある上映分(1〜2回目)は、
当日の午前に整理券が配られ、その番号順に入場というシステムに 。

整理券をもらい損ねると、舞台挨拶の回には入場できなくなる為、
うっかり昼まで寝過ごしてしまったらアウトです。その点だけ注意が必要でした。

(結果的に色々あり、寝不足のまま朝を迎えることになりましたが)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


10:15
◇◆ 整理券待ち ◆◇
 
“当日10:30より整理券配布”というキノの告知に、筆者は
「10時くらいから並んでいれば大丈夫だろう」と楽観的に考えていました。

しかしタイミングの悪いことに、出発直前に急な電話が入り、
自宅を出るのにもたついてしまい、現場到着は15分遅れの10:15。

まあ、それでも何とか…と思っていた筆者の目に入ってきたのは、



_| ̄|○ 甘かった。

先頭がまったく見えません。軽く100人を超える行列になっていました。
この数では、予定通り30分前に着いていたとしても40〜50人はいたでしょう。
まるっきり読みが外れてしまいました。
(1時間前(9:30)の時点で、すでにビルの外まで行列が伸び始めていたそうです)

これは最悪、整理券もらえないのでは…という嫌な予感もしましたが、
ギリギリ滑り込める可能性もあるわけで、とにかく諦めずに並び続けるしかありません。


まだ人通りの少ない土曜の午前に、長蛇の列がビルからはみ出している様子に、
道行く人たちも「何事?」と言わんばかりの表情で、行列を不思議そうに見ていました。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


10:30
◇◆ 整理券配布 ◆◇
 
並び始めから15分。
10時半になり、整理券の配布が始まりましたが、何せこの人数なので、
列がなかなか動きません。

途中何度も止まりつつ、のろのろとビルに入り、階段を上り、
さらに15分が経過したところで、ようやく2Fのキノ受付まで到着。

受付の説明によると、筆者の時点で
初回上映分は満席/2回目は空席に余裕あり
ただし補助席(パイプ椅子)なら、初回分も若干空席あり──とのこと。

順当に2回目を選ぶか、補助席を承知で初回を選ぶか、選択の分かれ目でしたが、
やはり落ち着いた席でじっくり見たかったので、2回目に入場することにしました。

(通路にパイプ椅子というのは、さすがにちょっと…)



筆者が受け取った整理券のナンバーは、50番でした。

上映に使われるシアターキノのB館(A館・B館があり、B館が広い)は、座席数が100。
初回が満席/補助席は数席/2回目の整理券番号が50番…ということは、筆者の前に
少なくとも150人は並んでいた
計算になります。道内の新海ファンおそるべし。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

それから、忘れずにパンフレットも早めに購入。
横長でポストカード仕様の凝ったデザインが特徴です。価格は600円でした。


11:00
◇◆ 暇潰し ◆◇
 
無事、整理券を入手してまずは一安心ですが、
2回目の上映開始(15:35)まで、4時間半もあります。
朝と昼を兼ねた食事を簡単に済ませ、いったん帰ることにしました。

近くのネットカフェで時間を潰すという手もありましたが、
ネットやマンガで4時間以上も潰すのは、さすがに疲れてしまいそうだし、
何より暑かったので、帰ってシャワーを浴びたい気分でした。

自宅までは約5km。徒歩なら1時間ほどかかりますが、
往復すれば自然と2時間潰せるので、なかなか好都合です。

(蛇足ですが、時速5kmで歩くと、およそ秒速140センチメートルですね)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

それにしても、この日の札幌は暑かった……
一週間前は5℃以下だったのに、この日は17℃にまで上がり、
日本気象協会が、北日本に「気象病」の注意を呼びかけたほどです。
(網走では、平年より10℃以上高い19.3℃(7月並み)を記録)

もともと暑がりの筆者にとっては、寝不足も重なり足取りが重く、
予想以上に消耗しました。


かなりへばってようやく帰宅し、シャワーに直行。
出発の時間になるまで、睡魔と戦いつつボーッとしていました。


15:15
◇◆ 入場待ち ◆◇
 
14時過ぎに自宅を出て、再びシアターキノに到着。

今度は、入場待ちの大行列になっていて、午前中と別の意味で驚きました。

番号順に入場するのだから、10分前に集合するだけでOKなのに。
整理券を手にしてもまだ不安なのでしょうか。ファンの熱意には頭が下がります。

担当の係員が行列の整理をしていたので、声をかけ整理券を見せたら、
列の前方に誘導してくれました。(前と言っても、全体のちょうど真中くらいですが)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

今回も、客層は若い人が多いという印象。
20歳前後で学生風の若者がもっとも多く、全体の半数を占めていたように思います。
続いてサラリーマン風の20〜30代男性が2〜3割、女性が1〜2割、40〜60代の年配客も
チラホラ見受けられ、中には初老の女性も並んでいて驚きました。

さすがに、親子連れや小中学生の姿は見かけませんでした。
子供向けに作られた映画ではないので、自然とそうなるのかもしれません。


15:25
◇◆ 入場 ◆◇
 
「では、2回目の時間となりましたので、番号順にご入場ください」

いよいよ、待ちに待った入場となりました。
入場は番号順ですが、座席は自由である為、実はここからが本番です。
前作『雲のむこう〜』の際には、あまり良い席を取れなかった反省を踏まえ、
冷静かつ、やや早足でB館に突入。

幸い、前半に入場した観客の多くは後方の席を陣取っていた為、
今回は2列目のほぼ中央という、ベストなロケーションを確保できました。
(舞台挨拶のある回に入場している以上、むしろ前列に席を取るのが正解です)

左右の通路に用意された補助席を含め、たちまち場内は満席に。
やはり補助席からでは、斜めにスクリーンを見上げることになり視野角が悪そう。

無理をして初回を選ばなくて良かったと、しみじみ思う筆者でした。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

上映直前のエピソードとして、ほぼ最後に入場してきた真面目そうでメガネ姿の青年が、
係員に導かれて最前列に着席したのですが、その男性が新海監督によく似ていた為、
客席の一部から“あれ…?”という空気が一瞬流れたことを、付け加えておきます。

(それほどざわつきはしませんでしたが、ちょっと面白かったです)


15:35
◇◆ 上映 ◆◇
 
「それでは、只今より『秒速5センチメートル』を上映いたします」

「上映終了後は、新海 誠監督と作画監督・西村貴世さんの舞台挨拶を予定しています」


アナウンスの後、場内が暗くなり、いよいよ上映開始です。


前回『雲のむこう〜』札幌プレミア上映(2004年11月)の際は、
パチン・パチンと、スイッチ2つ〜3つで場内が真っ暗になりましたが、
今回は、しっかりフェードアウトで徐々に暗くなっていきます。

さり気なく照明がグレードアップしていて、ちょっと感動。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


冒頭に【CoMix Wave FILMS】ロゴ。前回同様、予告編もなく、いきなり始まります。

見始めてすぐに気付いたこととしては、今回もフィルムによるアナログ上映であること。
音響もドルビー・デジタルではなく、ドルビーSR(アナログ音声)のようでした。

前作に続き、コンピュータ上でデジタル彩色された絵が、フィルムに焼かれて
アナログ公開されるという、時代を逆行するようなアプローチは、興味深いものがありました。
フィルム特有のノイズ混じりの映像は、クリアなデジタル映像とはまた違った趣があります。

デジタル環境で作られた動画をフィルムに焼いて公開する理由は、設備的に対応している劇場が少なく、採算も
高くつくといった事情からでしょうが、東京・渋谷のライズエックスで全国初の『秒速5センチメートル』HDデジタル上映が
2007年6月に開催されるそうです。詳しくは公式ブログを参照。



16:38
◇◆ 舞台挨拶 ◆◇
 
フィルムが終了し、照明が戻っても、場内は静寂と穏やかな余韻に包まれていました。

静かに始まり、静かに終わる。ほぼ予想していた通り、感動のクライマックスという表現でもなく、
じわりと心に染み入る作品──筆者としてはそんな印象の映画でした。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


そしていよいよ、CWスタッフの司会で舞台挨拶のスタートです。

※ 以下、走り書きのメモと記憶を頼りにしている為、不明瞭・不正確な箇所もありますことを予めご了承ください。


──CW FILMS の××と申します。本日、司会進行を務めさせて頂きます。
   今日は、シアターキノ公開初日ですが、おかげさまで1回目/2回目ともに満席で、
   監督・スタッフをはじめ、会社の者も皆喜んでおります。

   この週末からの封切りは、札幌と仙台の計2箇所ありましたが、札幌では
   前作
『雲のむこう、約束の場所』も上映して頂いたということもあり、先にこちらに伺いました。

   本日は、
新海 誠監督と、作画監督・キャラクターデザイン担当の西村貴世さんを
   お呼びしています。皆さん拍手でお迎えください!



満場の拍手の中、新海監督と西村氏登場!


新海「初めまして。今回、原作や脚本・監督をやりました新海 誠です。
   本日はたくさんの方にお越し頂いて、とても嬉しく思っています。よろしくお願いします」



西村「初めまして。作画監督をやらせて頂いた西村です。
   こんなにたくさん、生で皆さんの顔を見ることが出来て今日は嬉しいです」



筆者にとって新海監督は、2004年11月以来、2度目にお会いすることとなります。
2年半前と変わらず、キリッと凛々しく実に若々しい。

作画監督の西村氏は、今回初めてお目にかかりますが、穏やかで優しそうな表情の方でした。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


──今日は、飛行機とエアポート(新千歳空港⇔札幌を往復するJR快速)を乗り継いで、
   こちらに着いたのが午後2時過ぎでしたが、札幌に来て、まだここにしか居ないですね(笑)。


新海「そうですね。先ほども電車の中で駅弁を口にしたくらいで、まだ美味しいものを食べていないので、
   夜にでも(美味しいものを)頂こうかな、と思っています(笑)。

   この映画は、東京のシネマライズという映画館で最初に封切られ、ほぼ2ヶ月の
   ロングランになったのですが、昨日の夜に最後のイベント(ティーチイン*)がありまして、
   その後、関係者で夜中ワインを飲んだりしていたので、実は若干、二日酔い気味です(笑)

(場内笑)

  * 観客からの質問にスタッフや出演者が直接回答する質疑応答のイベント。


──天門さん*も、昨夜の打ち上げにいらしていたのですか?

新海「いえ、別にそういうわけではなかったのですが(笑)。
   2年半ほど前(2004/11/24)『雲のむこう〜』でこちらにお邪魔した際は、
   音楽の天門さんと一緒でしたが、これが物凄くお酒の好きな人で…(笑)。

   緊張しやすい性格で、人前に出る際は、まず飲んでから来る(通称・ガソリン充填)人でしたから、
   あのときは、ここに酔っ払いが一人いたのですが、今回は僕が二日酔いなだけなので大丈夫です(笑)」

  ノボル「何が大丈夫なんだ…」(『ほしのこえ』より)

  * 新海作品の全音楽を手掛ける音楽家。PCゲーム等にも幅広く楽曲を提供している。
    (前作の札幌プレミア上映・ティーチインの部で、筆者は音楽の制作手法について氏に質問した)



──シアター内の壁に、監督と天門さんのサインが書かれていますが、
   「僕はどこに書いたんだろう?」と先ほどおっしゃっていましたね(笑)。


新海「シアターキノさんの壁には、今までいらっしゃった
   監督や俳優の方々のサインがたくさん書かれているのですが、
   “そういえば、書いたような気がするな”と思って探したら、ありました(笑)。

   よかったら皆さんも見つけてみてください」


──西村さんは、北海道は初めてですか?

西村「えーと、5年前くらいに旅行で一度」

──どのへんに?

西村…あんまり記憶にないなあ。(場内爆笑)  もちろん札幌には来ましたけど」

──富良野とかは行かれました?

西村「あ、はい。駅に出たらあの曲*が流れていて。(場内笑)  なつかしい気分になりました」

  * 『北の国から』のテーマ曲「遥かなる大地より」



──では新海さんは、北海道は…?

新海「僕は、祖母が室蘭市にずっと住んでいたので、子供の頃から室蘭にはよく行きました。
   (会場のあちこちから、小さく「へえ〜」という反応)

   ですから、北海道は馴染み深いですね。もう数え切れないくらいお邪魔しています」

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


──ところで今回は、1年半もの長い間、
   新海監督と西村さんのお二人で作品を作られてきましたね。


新海「はい。この作品は、他の商業アニメーションとは少し違った作られ方だと思います。
   制作には1年半かかっていますが、最初は、僕と西村さんの二人で始めました。

   東京の渋谷にある僕の自宅をスタジオとして毎日、西村さんに通ってもらい、二人で
   「どういう絵作りをしていこうか」ということを試行錯誤しつつ、徐々に一人、また一人とスタッフが増え、
   最終的には学生アルバイトを含め、13人くらいが僕の部屋に通うことになりました。

   全編、自宅スタジオで制作しています。
   原画・動画・美術スタッフ・学生アルバイト・最終的に合成するアシスタントや僕自身が
   1年半詰めて作りましたが、劇場版アニメーションでこういう作られ方の作品は凄く珍しいと思います。

   一部屋だけではスペースが足りなかったので、近くにもう一部屋マンションを借りてスタジオを増やしたり、
   動画スタッフにはそれぞれの自宅で、原画の間を割る絵を描いてもらったりもしていますが、
   少人数ならではの親密な空気で、じっくり組み上げることの出来た作品になったと思います」


──西村さんは、この作品の前に『あらしのよるに』*という
   長編アニメーションを担当されていますが、そのときの体制と比べて今回はいかがでしたか?


西村「僕は今まで、大きい規模の映画などをやることが多かったのですが、
   大きいスタジオに大勢が集まって、全体が見えにくい形で進む作業が多いんですね。

   今回は、一つの部屋で作業が完結している状況だったので、凄く全体が見渡せて
   1カット1カット、監督と直接打ち合わせをしながら、丁寧に作らせて頂けたことを凄く感謝しています」

  * 同名のベストセラー絵本の劇場版アニメ化作品。原作・脚本:木村裕一/監督:杉井ギサブロー。


──いつも監督に見られてイヤだな、と思ったりしたことは?(場内笑)

西村「いや、全然そんなことは(笑)。
   猫の監督*にも監視されつつ、楽しくやっていましたよ。机の上からじっと見下ろされたりして(笑)」

  * 監督の愛猫・サユリ。新海ファンなら皆よくご存知ですね。


© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


──今回は、ロケハンにも多く行かれているんですよね。

西村「はい。まず最初はロケハンから入りました。
   岩舟(栃木県下都賀郡)や種子島(鹿児島県西之表市)に行きましたが、
   サーフィン*などの取材もして、気持ちが入ってから絵に入れたので、凄く良かったです」

  * 第二話「コスモナウト」中で、サーフィンのシーンが出てくる。

新海「この作品は、まず脚本と絵コンテまでを僕が書(描)いて、
   その後はトータル30名くらいで作ったのですが、脚本を書いた段階で、
   だいたいの舞台はこのあたりにしよう──と頭の中で決め、その後でロケハンに行きました。

   岩舟などは、西村さんはもちろん、何人かのスタッフも一緒に連れていき、
   劇中の舞台を想定した場所で、実際にスタッフに立ってもらったりしています。

   例えば、電車の中で西村さんに立ってもらい、さらにうなだれてもらって、
   その姿を写真に撮り、それを後で西村さんが自分で絵にすると(笑)。

(場内笑) ─なんという羞恥プレイ!─

   そういう形をずっと繰り返してきましたので、現実の場所がたくさん出てきますね。


   種子島も、僕はトータルで1ヶ月くらい滞在したのですが、脚本の段階では
   「電車くらいは走っているんだろう」と思っていたら、駅も・電車もない島で、
   学生たちは皆、学校指定のスーパーカブ(バイク)に乗っていたんですね。
   取材した高校にはサーフィン部もありました。

   それで劇中でも、カブで通学する高校生が出てきたり、サーフィンをする女の子が出てきたりと、
   ロケハンによって設定が大きく変わりましたね」


──では、残念ながら、そろそろ時間になりましたので、
   最後に西村さんと新海監督から一言ずつお願いします。


西村「こつこつと1年半作ってきた映画が、こうして皆さんに観て頂けて、
   今日は本当に感激しています。どうもありがとうございます」


新海「この作品は、必ずしも、物凄く幸せに終わるわけでもないし、かと言って
   物凄く不幸に終わったわけでもない──と、僕は思って作っているのですが、それは、

   僕たちの人生そのものが、常に幸せなわけでもないし、常に不幸の連続にあるわけでもなく
   その間で揺れ動いて、そんな中で、例えば昔にあったものなりを力に変えて、生きていかなければならない。

   エンターテイメントとしては起伏に欠けますが、それを何とか、絵の強度や
   音楽の強度で、映像作品としてまとめ上げました。人生とは、そういうものだと思うんですね。


   僕たちの人生は、実際はこのような、言葉にしてしまえば身も蓋もない、ささやかなものの集積で
   出来ているのではないか──ということを考え、アニメーションとして思い切って作った作品です。

   ですから観て頂いて、皆さんそれぞれ、もしかしたら「こうじゃなかったらいいのに」
   もしくは「こうあるべきだった」等々、色々なご意見があるかと思いますが、観て頂いて感じた感情を、
   何か一つでも家にお持ち帰り頂ければ、凄く嬉しく思います。

   本日は本当に、お越し頂いてありがとうございました」

(場内拍手)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


16:55
◇◆ ラストサービス ◆◇
 
盛大な拍手に送られ、ホールから退場する新海監督と西村氏。

今回、札幌ではスケジュールの都合上、ティーチインの予定は組まれていない為、
監督と差し向かいでのトークや質疑応答は、残念ながら叶いません。

それでも、最後にサイン会を開催するアナウンスがあり、喜んで残ることにしました。

「ポスターやパンフレットなど、何かお買い求め頂いた上でお並びください」

──相変わらず、キノも商売上手でちゃっかりしていますが、ここで午前中に購入した
パンフレットの出番が来ました。最後のページに広めの空白があり、サインを書き込むには
ちょうど良いスペース。念の為、自宅に置かずに持参して大正解です。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


しかし、ここからが長かった!

B館の出入口は後方にあり、退場も後ろの席からの為、前から2列目だった筆者は、
必然的にほぼ最後の退場となり、サイン待ちの行列にも、すっかり出遅れる形になりました。

まあ、今さら焦ったところで始まりません。
行列の最後尾付近でパンフレットを開きつつ、順番が来るまでのんびり気長に待つのみです。

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


17:50
◇◆ 再会、そして ◆◇
 
小一時間後、ようやく監督と西村氏のテーブルが近付いてきました。
もちろん、この頃にはパンフレットの内容すべてに目を通し終えています。

新海監督を目の前にしたファンの反応はそれぞれで、嬉しそうに色々言葉を交わす人、
うつむいて黙りこくってしまう人など様々でしたが、緊張して固まっている年若いファンには、
「ご出身はどちらですか?」とか「今日は、どちらからいらしたんですか?」などと、
監督の方から声をかけ、ファンの緊張を解いているのが印象的でした。


そして、いよいよ筆者の番。
長話する時間はないし、気の利いたことも言えないので、率直にそのまま…


──またお会いできて嬉しいです! (もちろん、監督が覚えていないのは承知の上で)

新海「あ、どうも。前にも(キノに)いらした方ですか?」

──はい、あの時はティーチインで質問させていただきました。

新海「ああ、ティーチインで質問された方ですか! ありがとうございます。
   今日はティーチインは……」
(申し訳なさそうな表情)


──ないんですよねー。それが少し残念ですが(笑)。

   今回も、とてもセンチメンタルな情景、素晴らしかったです。
   ぜひまた(新作で)札幌にいらしてください。楽しみにしています!


新海「ありがとうございます。頑張ります!」

(両手で握手)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films


続いて、西村さん側のテーブルへ移動。残された時間は、あとわずかです。

──はじめまして。とても綺麗で、色々な意味で美しい映画でした。

西村「ありがとうございます。嬉しいです」

──ぜひまた北海道にいらしてください。今日はありがとうございました!

(両手で握手)


こうして両氏からサインして頂いたパンフレットを大事にしまい、シアターを後にした筆者。
外に出ると時刻は18時。もう日が暮れかけていました。


(後日知りましたが、キノでは予想を上回る入場者数に、3回目の上映後も急遽舞台挨拶が行われたそうです)

© Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

この映画は、スペクタクル巨編でもなければ、愛と感動の物語というわけでもなく、
作品の受け止め方も人それぞれに違うと思います。


うまくは言えませんが、この作品を見ようとするに至った主な動機として、
筆者の場合は“美しい風景を眺めにいこう”という感覚が大きかったように思います。


もし機会があったら、もしくは気が向いたら、
ぜひ貴方も、少し切ない気分になる「桜」を眺めにいってみてください。


2007/5/04 みどりの日に、桜が咲いた札幌より


お疲れさまでした!

─ Thank you for reading !! ─


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